働く場所2

前回はサービスとしての働く場所ですが、次は地域としての働く場所です。

介護保険の収入は、日本全国どこでも同じではなく、地域として加算があります。保険点数1点につき、いくらになるかというのが地域によって違うということです。

しらべればいくらでもデータが出てきますので詳しいところは割愛しますが、東京23区が一番高いということになります。なので、東京23区に隣接している自治体は、人材難であることが容易に想像できます。

おそらく一番厳しいのは神奈川県川崎市でしょう。23区の1級地に次ぐ2級地ではあるのですが、とにかく23区との交通の便が良すぎて、人材確保が難しいです。逆に働く側からするとよい条件を引き出せる可能性があるともいえます。

3級地である武蔵野市三鷹市あたりも隣が杉並区、世田谷区といった高級住宅街を要する区ですので厳しいといえば厳しいのですが、特に都内は施設で駐車場を確保できる余裕のあるところは少ないため、近接で働きたい方が多く川崎ほど厳しくはないかもしれません。

埼玉に目を移すと、東京都へのアクセスが良い川口市戸田市八潮市草加市新座市所沢市あたりは苦戦が予想されます。待遇は需要と供給のバランスによるのが普通ですから、こういったところに待遇のよい会社を見つけ出すことができるかもしれません。

働く場所

働く場所も重要です。どんな会社でもそうですが、企業の利益に応じて給与が高いはずです。が、介護の会社はそのほとんどの収入が介護保険なので、あまり売上での差は本来つかないはずです。が、現実的には差がつきます。

まずは、施設介護もしくはいわゆる箱ものの介護サービスの場合、定員に対しての稼働率を確認しておくのはよいかもしれません。稼働率が高い営業所はそれだけお客様1人にかかる経費が分散するということですから、利益率が高いと考えることができます。

ただ、多数のサービスを展開している会社ですと、その営業所だけではなくほかの営業所で足を引っ張っているところがあれば、この優位性はなくなります。むしろ、稼働率の高いということは、他の同法人の営業所と比べて仕事量が多い営業所の可能性もあるので、見極めが必要です。

特に小規模多機能型居宅介護は1ヶ月に対しての介護報酬がどのようなサービスを行っても同額のため、一番左右されやすいでしょう。難しいのは特定施設とグループホーム認知症対応型共同生活介護)です。前者はショートステイとして、後者はデイサービスとして利用できるところもあるため、一概にこれだけではない場合があります。

訪問系の会社ですと、一人当たりが1日にどのぐらいの時間稼働に出ているかを確認するとよいでしょう。件数は意味がありません。なぜなら、ケアマネジャーが例えば30分の身体介護であるとか、60分の生活援助などというようなケアプランを組むことがあるため、30分を2件と60分を1件ならば稼働時間は同じでも件数は異なるからです。

 

次回に続きます。

 

処遇改善加算の配分方法3

前のブログから随分時間が空いてしまいました。すみません。

 

処遇改善加算の配分の仕方は様々な方法があります。また、これが介護の会社の特徴を色濃く反映するところでもあります。

おそらく多くの介護業者は、ある程度均等に対象者に配分し、資格手当や昇給分、賞与などで配分するところが多いと思われます。

変わったところですと、募集を強くするために新規採用の方を1年限定で処遇改善加算を多めに割り振って給与を多く支出するところもあったりします。なにか不思議ですよね。

これは実はよく考えられた方法で、あまり組織として必要ではないと思う方はそのまま減給するのですが、よさそうな方には先に声をかけて次の1年も同じ給与、場合によっては昇給の話をします。そうすると、必要ではない方は減給が不満で離職しますので、次の採用でより良い介護職を採用できるかもしれないという考え方をしているわけです。

多サービスを運営しているところでは、各サービスごとに処遇改善加算の割合が違いますが、それでも均等に配分を行うという業者も多いと思います。が、これをおこなうと処遇改善加算の額が大きくなったため、サービスごとの採算を考えた時に、処遇改善加算の割合が低いサービスに人件費が多く配分されるため、正しい利益が見えなくなってしまいます。

扶養範囲内で働く方には配分をしないところもあります。処遇改善加算はその年の介護保険サービスをどれだけ行ったかによって変わってくるため、処遇改善加算を受け取ったがために扶養範囲内の賃金を超えてしまう可能性があるからです。

どんな配分をしてもすべての方によい配分というのはないのですが、渡す方ももらう方も悩ましいものであります。

 

 

処遇改善加算の配分方法2

処遇改善加算は基本的に介護現場で直接要介護者の方を介護する職種がもらうことができます。そのため、福祉用具の相談員さんや看護師さん、リハビリ職や事務、キッチンスタッフ、居宅介護支援のケアマネジャーなどは基本もらうことができません。

そのため、小規模の業者では介護職のほうが看護職よりも年収が高いといったことがまれに起こります。

また、ケアマネジャーになるために必要な介護支援専門員資格は一般的には介護福祉士よりも難易度の高い資格ですが、処遇改善加算が常勤の方ですと年間20万円から60万円程度支給があるため、ケアマネジャーを行うより介護職員として働いた方が給与が高いといった現象も出ています。

本来であれば、介護保険点数をあげて対応すべきなのでしょうか、前のブログのように保険点数をあげても介護職員の処遇をあげなかった歴史があるため、しばらくの間は処遇改善加算を増額することで、介護職員の待遇をあげようという流れは変化がないものと思われます。

そのため、地域から居宅介護支援事業所が少なくなり、ケアプランを作成委託できる方が全く足りない市区町村も出始めています。これは、ひいてはケアプランによって使ってもらえる業者の新規のお客様が増えなくなることを意味するため、連鎖的にその地域の在宅介護の衰退を迎えます。介護支援専門員が国家資格ではないことが一因あるのかもとも思いますが、すくなくとも介護支援専門員には処遇改善が必要になるものと思われます。

また、同様に管理職をするよりも現場職のほうが稼ぐことができる業者もあるでしょう。特別処遇改善で条件付きで多職種への配分が認められていますが、これを行うと国が特別処遇改善加算によって年収420万円の方が1名いるという条件を満たすのがむずかしくなるため、ほとんどが介護職に配分されているはずです。これにより、管理職へのなりてがなくなり、結果閉鎖する事業所が出てしまうことも予想されます。

長くなってきましたので、また次回とします。

 

処遇改善加算の配分方法1

処遇改善加算とは、簡単に申し上げれば介護職の給与をあげるために、介護保険の中から一定の割合で介護を行う法人が受け取ることができる加算金です。現在3種類あり、

・処遇改善加算

・特定処遇改善加算

・ベースアップ等支援加算

となっています。

元々は介護職の処遇をあげるために介護保険の点数をあげたのですが、結局業者が内部留保してしまったため、用途を限定して支援を始めたものと考えていただければよいかと思います。

気をつけなければならないのが、処遇改善加算はあくまで「加算金」であることです。例えば100床の特別養護老人ホームA,Bがあったとして、Aは年間平均90床、Bは年間平均80床が使用されていたとします。当然Aには90床分、Bには80床分の介護保険収入があります。加算はこれらに割合で乗っかりますので、Aには90床分、Bには80床分の加算金が支払われます。つまり、介護職員の人数で決まっているものではなく、その企業が行った介護の仕事の量と質によって金額が決まります。

また、その企業が行っているサービス形態やとっている処遇改善加算の種別などにも左右されます。

さらには、処遇改善加算は職員全員に平等な金額を配分する必要はありません。

長くなりましたので、次回も同じ話題で行こうと思います。もしかすると2回では終わらないかもしれません。

サービス別の給与

働くサービスによっても給与は変わってきます。あたりまえといえばあたりまえなのですが、収入に対して経費が少ないサービスが給与は高くなります。

例えば訪問介護は、それほど大きな経費が掛かるものがありません。車は介護職が持ち込む「直行直帰」という雇用形態が主流のため、事務所もそれほど大きくなくてよいです。営業力さえあれば、一人当たりの人件費に充てることが容易です。

社会福祉法人収入印紙や固定資産税などで免除される場合が多いため、いわゆる「箱もの」が必要な施設については、株式会社等に比べて収益性が高い場合が多いです。特に特別養護老人ホームは要介護3以上ではないと入居できないため、結果入る介護保険料も高くなります。そのため、給与に反映されることが多いでしょう。

ただ、株式会社もオーナー制度を使い、土地と建物をオーナーから借りることによって自身では固定資産を持たずにリース代を払うという方式を取っているところもあります。このばあい、自社物件よりはかかる経費が下がると思われます。どうしても施設の経年劣化は避けられませんので、その修繕費を考えるとオーナー制度を利用することは理にかなっていると思います。

訪問入浴介護は1回当たりのサービス料金は高いのですが、訪問入浴車を生産できる会社がそもそも非常に少ないため入浴車1台の料金が高く、かつ看護師の派遣利用率が高いため、そこまで人件費をかけられません。他よりも給与が高いと思った場合には、自社で看護師を確保できる法人かもしくは他と比べて1日当たりの稼働件数が極端に多いところでしょう。

老人保健施設は比較的時給が低めに設定されていますが、医療法人が母体のため、賞与が高めに設定されていることが多いです。また、パートさんにも賞与が出る場合もあります。理由はわからないため、ご存知の方がいらっしゃいましたらご教授いただけるとありがたいです。

役職や役割

ほとんどの会社は現在働かれているスタッフの中からこの人ならばという方を見出して役職に就けるのが一般的かと思いますが、急速に発展している会社やスタッフが不足している(特に新卒者の採用をしていない会社)では、役職者の採用をする場合があります。この場合、施設長や営業所長などではない、各サービスごとに必要とされる役職があります。

例えば訪問介護の場合は、「サービス提供責任者」という役割があります。少し齟齬はありますが、各スタッフの能力や稼働できる時間帯を見極めて、最適に仕事の割り振りをするお仕事です。実務者研修以上のお資格をお持ちであればなることができますが、各スタッフの能力を見極められる目が必要になりますので、訪問介護の経験者でなければなかなか採用にはならないと思います。

デイサービスや特定施設では、「生活相談員」という役割があります。その施設の代表として担当者会議等に出席し、被介護者の普段の様子を共有します。デイサービスでは、大体の市区町村で「社会福祉主事任用」もしくは「介護福祉士」の資格が必要になります。特定施設の場合には特に資格要件がないため、人生経験豊富な方を外部から採用する場合も稀にあるようですが、やはりお客様の状況がわかっていないと、その施設の資質も問われてしまうため、次世代の生活相談員を育てるという意味での採用はあっても、メインの生活相談員として外部採用を行うことはさほど多くないと思います。

ユニット型の特別養護老人ホームショートステイでは「ユニットリーダー」という役割があります。まさに「ユニットリーダー」という資格があり、ユニットケアの責任者です。大概は施設介護職の中でこの研修を受けてもらい配置されることが多いですが、この研修を取得したとたんに転職する方も少なからずいらっしゃるため頭の痛い資格です。全国的にショートステイが減っているのは、似たような使い方ができる施設が増えたこともありますが、この問題も一因としてあげられるでしょう。

上記はほんの一例ですが、それぞれの役割には役職手当がつく場合が多いため、介護職として収入を増やすことができます。